コラム

『ハクセン』という名まえ

コラム 白線文庫

『ハクセン』という名の由来を、白線文庫のころからよく聞かれていました。

その度に、敬愛していた祖父の会社の名前を引き継いで、という話をしていたのですが、

実は『白線』の名には私の考えた意味ものせています。

 

「余白」の「白」と、「優美な線」の「線」。

どちらも、白線文庫を準備している頃に読んだ本の中で見つけたものです。

 

「余白」については、武満徹さんの本の中から。

“想像力を刺激する、行間や余白”

「白」が「余白」であるということは、はじめから決まっていました。

そして本の中で見つけた文章で「想像力」とつながったときに、

「そうそう!」と膝をうち、しみじみと深く共感したのでした。

ハクセンでは、何をするにも余白の部分をとても大事にしています。

日本古来の侘び寂びの美意識ともつながる、想像の余白。

 

「優美な線」は、串田孫一さんの本のカバーのそでのところに書いてあった、

“優美な線を描くように生きて行きたまえ”

この言葉を一目見て、これだ、と思ったのが今でも鮮やかに思い出されます。

優美な線を描くように生きる、簡単に言えば、

のびのびと生きる、ということなのかなと今では思っています。

自分の内からわき上がる、心から望んだことをして

周りの人たちとそのよろこびを共有し、

のびのびと生きている様子はきっととても美しいものです。

それが優美な線。

 

本は人の想像力を引き出し、誰もがのびのびと生きるための助けをしてくれる。

経験から、そう実感しています。

そして、『白線文庫』から『HAKUSEN』になり仲間が増えた今も、

同じ想いでいつもお店を磨いています。

 

kaori

 

 

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うちはうち、よそはよそ

コラム

先日の、BEAU PAYSAGE の会。

山陰の冬には珍しく、ぱきっと朝から、ずーっと快晴。

雨や曇りの日の霧がかった白い世界もそれはそれは美しいのだけど、

たくさんの人の集まる宴の席にはうってつけの終始気持ちよく晴れた一日でした。

 

ハクセンにとっては、始まって以来の大きなイベントの一つ。

関わる人の数と多様性を考えると、今までに類を見ないイベントでした。

お客さんもスタッフもみなさんそれぞれに

いい時間を過ごしていただけたのではないかと思います。

BEAU PAYSAGEという、あるがままの自然をそのままに映しとり

表現することを志したひとつのワインを真ん中に置いて、

きっとそれぞれがそれぞれに、感じることもあったのではないかな。

中には今は気付いていなくても、何かの拍子にふっとこの時のことが

思い出されるということも、もしかするとあるかもしれません。

それはその人それぞれにゆだねたいなと思います。

ハクセンにとっては、たくさんのことを学ばせていただいた実り多い会でした。

関わってくださったすべてのみなさんに感謝しています。

 

さて、お話はまだ少し長くなりそうです。

早いもので、新しい年の足音がすぐそこまで。

思えば、今年のはじまりのこじまさんの夜長書き初め、

「うちはうち、よそはよそ」に始まり、

夏の参議院選挙の時に感じた、「世界に多様な人が存在し、

その多様性を認めあえる社会になっていくように」という強い気持ち。

そして、BEAU PAYSAGEのイベントに終わろうとしている2016年。

多様性というものを強く意識した一年だったなぁと思います。

思い返すと数年前までの栃木にいた時の私たちは、

あの小さくも大きな閉じた世界の中で守られていて、

ぬくぬくと、まるで母親の胎内にいるかのような

あたたかく幸せな時を過ごしていたような、そんな気がしています。

そして、厳しい厳しい、産みの苦しみを味わい、

自分たちの足で歩くことを、“自分の名前でいる”ということをはじめました。

文字通り荒波にもまれながら(嵐の日のハクセンは、まるで難破船)、

ありのままの私たちでいるってどういうことだろうということを

試行錯誤、感じるままに表現しながら考え続けています。

そして二年目の今年は仕事を通じて本当にいろんな方々と関わらせていただきました。

いろんな方と関わることでまた自分たちの個性がよりくっきりと

浮かび上がってくるように感じています。

夫婦二人きりで始めたお店でしたが、12月からは新しく一緒に働いてくれる仲間もできました。

今まで以上に多様性というものを強く意識した一年、さて来年はどんな年になるのかな。

こじまさん、いよいよ厄年!

私は後厄が終わる!

 

なんだか一年の締めくくりのような文章になってしまいましたが、

まだまだ年末までしっかり営業しています。

クグロフのご予約もたくさんいただきありがとうございます!

焼き菓子のギフト製作も増えてきて、忙しくも嬉しい毎日です。

鋭意製作中、どうぞお楽しみにお待ちください。

 

kaori

 

 

 

 

 

 

風の見える場所で

コラム

数年前、私たちの敬愛している年上の友人とカフェについて話をしていた時のこと。

その人に、「もしも、なんの制限もなくどんな場所にでもお店が作れるのだとしたら、どういうところにカフェを作りたいと思いますか?」と聞いた答えが、「うーん、風の見える場所かな。格好よすぎるかな。」でした。

その言葉を心のすみっこで頼りにしながら、鳥取のいろんなところを巡って辿り着いた先が今HAKUSENのある場所。この場所に辿り着く前には、ここでお店ができたらいいのにと強く思うところが他にもあったのだけど、そこでは強い強い逆風、どうしようもなく打ちのめされて断念。気持ちを変えて方向転換をしてみると今度はとんとんとん、と、不思議なくらいにことが運び、思ってもみなかった場所で、当初考えていたのとは少し違う形でお店を始めることになったのでした。今思えば、私たちらしくお店を始められる一番良い方向に進んでいたのかなと、そんな気さえしています。

この東郷湖沿いの見慣れた景色。小さい頃から家族でよく遊びに行っていた公園も近い。のどかで、広々とした気持ちいい風景が広がっていて、散歩が楽しみになるような、近くにありすぎて気づかなかった、なんでもないけど特別な風景。この場所との出会いは、なんだか幸せな結婚のような顛末でした。

風景の「風」は、吹き抜ける風なんだ、と。これは植田正治さんの言葉。ここではどの瞬間にもすばらしい、美しい風景が広がっています。風の見えるこの場所でお店を始めてもうすぐ一年半。地元とはいえども十年以上も離れると雰囲気も変わっているし知らないことも多い。遠くから越してきて、ちょっと心細くスタートしたこの地で、行きつ戻りつしながらもなんとかここまでやってきました。その月日の中からふわりと立ちのぼるようにゆるやかなつながりもできてきて、私たちだけでは到底できなかったであろうイベントを一緒に企画させてもらっています。この場所がよろこぶようなすてきなイベントになればいいな。数日中にお知らせできるかと思います。どうぞ、お楽しみに。

kaori

 

日常の中に少しの特別を

コラム

ハクセンではどの時間帯もお食事をお出ししていません。お店を始めた頃によくお客さまから、カフェなのに、ランチを出していないなんて!と、驚かれていました。なぜかというとハクセンでは、お茶の時間を楽しんで頂きたいから。大げさだけど、お茶の時間というものが人生に与えてくれるものの大切さを信じています。そこには小さくても確かな幸せがあるはず。少し立ち止まって、大きく息をつく時間を持つだけで、心や体が少し軽くなるように。人が人のことを思って、手間をかけて丁寧に作ったものには力が宿ります。コーヒーも、お茶も、お菓子も、空間も、真摯に丁寧に作られたもの、自分たちでじっくり考えながら作っているものを用意しています。そこで静かな時間を過ごすことで、新しい自分に出会えるのかもしれません。そう考えると、カフェと本とはよく似ている、そんなふうに思います。用意された空間で、一杯のコーヒーと、ちょっとしたお菓子とを楽しみながら、日常の些末なことは忘れて少しぼーっと過ごしてみる。あるいは、本を片手に、しばらく読むともなしにぱらぱらとページを繰ってみる。それとも、いつも顔を合わせている人とのなんでもないおしゃべりの中に何か新しいものがうまれることがあるかもしれない。人は「なにか面白いこと」に出会えるかもしれないと思って、お店のドアを開きます。その「何か面白いこと」というのは、結局は人やお店が与えてくれるのではなく、自分の中にある何かを発見することなのではないかな。素敵な服に出会いたいのではなく、素敵な服を着た新しい自分に出会いたいのでしょう。ハクセンはいつもそういう場でありたいと考えています。みんなでわいわいもいいけれど、自分と過ごす静かな時間もいいものです。ちなみに、一緒に働くスタッフの募集もまだまだ継続中です。

kaori

 

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